WhatsAppの会話を、あとから見返せる形で手元に残したい。
読み返すだけなら、チャットを開けば済みます。でも、過去のやり取りをまとめて確認したり、必要な情報を表計算ソフトで整理したりしようとすると、チャット画面のままでは少し不便です。
必要なメッセージを探して、コピーして、貼り付けて、見やすく整える。一つひとつは小さな作業でも、繰り返すとなかなか面倒でした。
「会話を選んで、使いやすい形式で書き出せたらいいのに」
その小さな不便が、Chrome拡張の「WaExport」を作るきっかけになりました。今回は、そこから機能を考え、形にして、収益が出るようになるまでの話を書いてみます。
最初に考えたのは、「エクスポートできる」だけで十分なのか、ということでした。
WhatsAppには、標準のチャット書き出し機能があります。だから、単に同じことができるツールを作っても、使う理由は弱いはずです。
そこで、書き出したあとの使い方から考えることにしました。
会話の流れをそのまま読みたい人もいれば、Excelで検索や絞り込みをしたい人もいます。別のツールでデータを扱いたいなら、CSVのほうが便利かもしれません。
同じ「チャットを保存したい」でも、欲しい結果は少しずつ違います。
私が作りたかったのは、データを取り出すだけのツールではなく、取り出したあとに使いやすいツールでした。
この考えから、出力形式にはHTML、Excel、CSVを用意しました。HTMLは会話を読み返すために、ExcelやCSVは情報を整理するために使えます。
また、必要なのは必ずしも会話の全履歴ではありません。
「この案件について話していた期間だけ確認したい」
「先月のやり取りだけ整理したい」
そんな使い方を考えると、日付の範囲を指定できることにも意味があります。保存する量を増やすより、必要な範囲を自分で選べることを大切にしました。
実装を進めるうえで意識したのは、機能の数よりも、一連の操作がわかりやすいかどうかです。
WhatsApp Webを開く。拡張機能から対象の会話を選ぶ。形式と期間を指定する。書き出したファイルを確認する。
この流れで迷う場所があると、小さな作業を楽にするはずのツールが、新しい手間になってしまいます。
作る側からすると、設定項目にはそれぞれ理由があります。でも、使う側が知りたいのは「どれを選べば、欲しいファイルができるのか」です。その違いを忘れないようにしました。
チャットを扱う以上、保存されるデータについても、説明が必要だと考えました。
WaExportでは、書き出すチャットの内容をブラウザ内で処理し、ファイルを手元に保存します。一方で、アカウント認証やライセンスなどに関わる情報は、チャットの内容とは分けて説明する必要があります。
「ローカルで処理する」という短い言葉だけで、すべてが伝わるわけではありません。何が端末内で扱われ、何がサービスの利用に必要なのか。安心して使ってもらうためには、機能と同じくらい、その説明も大切だと思っています。
できることの境界も、はっきりさせました。
たとえば、書き出したファイルは、閲覧や整理のための記録です。WhatsAppに読み込んで会話を復元するためのファイルではありません。メディアの取得にも、WhatsApp Web上でアクセスできるかどうかなどの条件があります。
期待どおりに使ってもらうには、便利な点だけでなく、こうした条件も伝える必要がありました。
こうして形にしたのが、[WaExport](https://waexports.wadesk.io/)です。
公開してからは、「動くものを作ること」と「使う理由が伝わること」は別だと感じました。
開発していると、対応形式や設定項目を説明したくなります。でも、それだけでは、自分に必要なツールなのか判断しにくい。
HTMLに対応していることよりも、「会話をブラウザで読み返せる」と伝えたほうが、使い道を想像できます。CSVに対応していることも、「やり取りを表にして整理できる」と説明すると、機能と目的がつながります。
機能を紹介する文章も、開発の続きなのだと思うようになりました。
そして、WaExportから実際に収益が出るようになりました。
自分で考えたものが動いたときとは、また違う手応えがありました。
使えるツールを作れたことに加えて、その便利さにお金を払ってもらえた。自分が気になっていた小さな不便に、ほかの人にとっても解決する価値があったのだと感じました。
もちろん、購入された理由を、こちらの想像だけで決めつけることはできません。時間を減らしたかったのか、欲しい形式で保存したかったのか、それとも別の理由があったのか。そこは、これからも確かめていく必要があります。
収益が出たことで、開発が終わったわけでもありません。
むしろ、使ってもらい続けるために、動作の確認や説明の改善、不具合への対応を続けることの重みが増しました。WhatsApp Webを利用する拡張機能なので、外部サービスの変化にも向き合っていく必要があります。
振り返ると、出発点は大きな事業アイデアではありませんでした。
「この作業、もう少し簡単にならないかな」
そう感じたところから、誰が、何のために、どんな形でデータを使いたいのかを考え、一つずつ機能にしていきました。
今回の開発で学んだのは、小さな不便でも、前後の作業までよく見ると、作るべきものが具体的になるということです。
これからも、機能を増やすことだけを目標にせず、必要な情報を必要な形で取り出せるツールに育てていきたいと思っています。
皆さんは、日々の「ちょっと面倒だな」から、何かを作ったことはありますか。そんな個人開発のきっかけも、聞いてみたいです。
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