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「AIが人の仕事を奪う。」
ここ数年、この話ばっかり聞くようになりました。
ニュースでは海外企業のレイオフが取り上げられて、「次は日本もこうなるんちゃうか」と不安になる人も少なくないと思います。
でも、日本企業でほんまに起きそうなんは、もっと静かな変化かもしれません。
人を大量にクビにするんやなくて、新しく採らへん。
派手さはないけど、この変化の方があとあと効いてくる気がしています。
今回は、「AIは雇用を奪うのか」という話ではなく、「仕事に就く入口」がどう変わっていくのかを考えてみます。
AIの話になると、どうしてもレイオフばかりが話題になります。
確かに海外では数千人規模の人員削減がニュースになりますし、インパクトもあります。
ただ、日本企業を見ていると、そこまで急激な動きはあまり考えにくいです。
終身雇用の考え方もまだ残っていますし、解雇にはコストも時間もかかります。
だったら企業はどうするのか。
たぶん、一番選びやすいのは「採用を減らす」という方法です。
辞める人が出ても補充しない。
新卒採用を去年より少なくする。
これならニュースにもならへんし、社内の反発も小さい。
でも、何年も続けば結果は同じです。
会社の人数は、ゆっくり減っていきます。
例えば、これまで10人で回していた部署があったとします。
生成AIのおかげで資料作成や分析、メール対応なんかが速くなって、7人でも問題なく仕事が回るようになった。
そんな状況になったら、わざわざ3人を解雇する会社は多くないでしょう。
退職した人の穴を埋めなければ、それだけで人数は自然に減っていきます。
会社からしたら、この方がずっとやりやすいんです。
人件費は少しずつ下がる。
社内も揉めにくい。
株主への説明もしやすい。
派手な改革ではないけど、経営としてはかなり合理的です。
しかもAIの恩恵を一番受けるのは、新人より中堅社員です。
仕事を知っている人ほどAIを使いこなせます。
経験とAIが組み合わされば、一人あたりの生産性はこれまでより大きく伸びるでしょう。
そうなると、「人を増やす理由」が前より少なくなります。
新卒採用には、お金より時間がかかります。
入社したその日から成果を出せる人なんて、ほとんどいません。
先輩が教えて、失敗をフォローして、少しずつ仕事を覚えてもらう。
どこの会社でも当たり前にやってきたことです。
でもAIが普及すると、その時間の価値が変わります。
ベテラン社員がAIを使えば、一時間で終わる仕事が増える。
そんな中で新人教育に何時間も使うと、「この時間で仕事終わらせられたな」と考える人が出てきても不思議ではありません。
だからといって育成が不要になるわけではありません。
ただ、採用担当者の頭の中で「ゼロから育てる」より、「経験がある人を採る」方に少しずつ傾いていく可能性はあります。
中途採用。
第二新卒。
業務委託。
会社によって割合は違いますが、こうした採用は今より増えていくかもしれません。
ここで困るのは若い世代です。
経験者は最初から経験者やったわけやありません。
どこかの会社が新人として採って、育てたから経験者になれたんです。
でも、どの会社も経験者ばかり欲しがるようになったらどうなるでしょう。
新人が経験を積む場所そのものが減ってしまいます。
しかも、その影響はすぐには出ません。
5年後、10年後になって、「中堅がおらへん」という形で表れてきます。
育てる会社が減れば、市場全体で経験者も減る。
企業同士で同じ人材を取り合うしかなくなります。
目先では採用コストを減らせても、長い目で見ると自分たちの首を締めることになるかもしれません。
少し思い出すのが就職氷河期です。
あの頃も企業は採用を絞りました。
もちろん理由は景気です。
今回とは事情が違います。
ただ、「新人を採らない期間」が長く続くと、その世代全体が影響を受けるという点では似ています。
違うのは、今回は景気が回復したら元に戻る話ではないことです。
AIは毎年進化しています。
つまり、生産性が上がり続ける限り、この流れも長く続く可能性があります。
とはいえ、新卒採用がゼロになるとは思いません。
製造業もそうですし、医療やインフラ、研究開発も長い時間をかけて人を育てる仕事です。
経験者だけ集めても回らない業界は、これからも新卒採用を続けるでしょう。
一方で、AIの影響を受けやすい職種は少し事情が違います。
IT。
バックオフィス。
マーケティング。
コンサルティング。
このあたりは、一人あたりの仕事量が増えることで採用人数を減らしやすい分野です。
「新卒採用がなくなる」というより、「去年より少ない」が毎年続く。
そんな変化の方が現実的やと思います。
昔なら、「入社してから覚えます」で通用した場面もありました。
でもこれからは少し厳しくなるかもしれません。
学生時代に何をやってきたか。
何を作ったか。
どんな経験があるか。
そういう部分が今より重視されるでしょう。
AIを使えることももちろん大事です。
ただ、AIを使えるだけでは差になりません。
ほとんどの人が使えるようになるからです。
結局見られるのは、「AIを使って何を作ったのか」。
そこまで見られる時代になると思います。
AIが普及したからといって、来年いきなり失業者があふれるとは思いません。
日本では、そんな急な変化は起きにくいでしょう。
でも、新卒採用が少しずつ減ることは十分あり得ます。
会社にとっては合理的な判断です。
ただ、それが当たり前になれば、新人が経験を積める場所は確実に減ります。
AIが奪うのは仕事そのものではないのかもしれません。
最初の一社。
社会人としてスタートを切る、その入口です。
もし本当にそうなるなら、これから考えないとあかんのは「AIに仕事を奪われるかどうか」ではありません。
新人をどう育てるか。
その仕組みをどう残すか。
AI時代の採用は、そんな段階に入り始めている気がします。
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